2009年8月25日

世田谷観音朝市



日頃の行いの悪いマメヒコがですね、下馬にあるお寺、世田谷観音様に、この9月より出家することになりました。



うそ。




日頃から朝に強いマメヒコがですね、下馬にあるお寺、世田谷観音の朝市に、この9月より出店する運びとなりました。

これも観音様のご縁です。ぱちぱちぱち。

朝市は毎月第二土曜日の朝6時から開催しているそうです。はやっ。

世田谷観音本坊(旧小田原藩代官屋敷)にてコーヒーをお出しするほか、
朝市限定の野菜ビスケットを作っていざ参りたいと思っております。

観音様の前で罰当たりのないよう精進いたしますので、是非みなさまお越しいただき、
夜遅くから朝早くまで頑張るマメヒコにがっぽりお布施くださいますよう、観音様共々お待ちしております。
だから罰が当たるんだってば。

当日は三茶、渋谷とも通常通り8時より営業いたしますので、こちらもどうぞお見知りおきを。

初回は9/12(土)です。のぞいてみてね。

2009年8月 8日

シリーズ 『おやつが好き』6

井川「なにかおやつについて思い出ない?」

 

Frown私の家は幼い頃からおやつは買ったものばかりだったし、
せいぜい作ってくれたといっても簡単な蒸しパンで。
とくにおやつの記憶はありません」

井川「そんなことないと思うよ。思い出してみて」

Frown「みんなみたいにそんなお母さんがケーキを作ってくれたとかないもの。
家は手作りのお菓子などなくて、
料理も簡易的なものが当たり前で。
もの心ついた頃は自分の家のご飯があまり好きじゃなかった。

だからいつしか家でご飯を食べなくなって、
とても外食が増えていったの」

井川「そうね。
みんながみんなお母さんが料理上手で
子供に手作りケーキを熱心に作るというわけじゃないね。
というより、ここにいる人たちのエピソードが実はとっても
恵まれているものだと思った方がいいかもしれない。
小さいときの体験というのは確かに大きくものを言うけど、
そんな君が、どうして、マメヒコで働こうと思ったの?」

Frown「それは一言では言えないけれど。

ただ、こういうことがあったんです。

大人になってから出会ったある人にね、
本当に美味しいものは、素材がいいシンプルなもので、
それを使って自分で作るのが一番楽しくて美味しい。と」
料理を作るのは
ずっと手間のかかるものだと思ってたから。

もちろん手間をかけた分だけおいしくなる料理もあるけど、
とっても簡単に美味しいものも作れるんだよって教えてもらったんです。
それを知ったのはもう二十歳を過ぎてたかな。
でも思えば、その衝撃があったから、いまマメヒコにいる気がする」

井川「うん」

Frown「それを聞いたとき、とっても衝撃で。

井川「大人になって初めてそういうことを知って、だからこそっていうね。
でもね。
いくら親がケーキを作らないと言ってもね。
子供ながらにやっぱりおやつは食べていたと思うの。
よく思い出して。
何をおやつとして食べてた?」

Frown「・・・」

井川「・・・」

Frown「・・・漬け物」

井川「漬け物ね。うんうん、どんな漬け物?」

Frown「まだ小学生にもならないうちから、
おばあちゃんと漬け物を食べてました。
おばあちゃんについて行ったおばあちゃんの友達の家でも
漬け物は必ずあって。
おいしいからおかわりも頂いていた。

そうそう。
野沢菜とたくわん。

漬け物は毎年、親戚も総出で「お菜洗い」というのをみんなでやって、
そうやって野沢菜を漬けてました。

雪の降るような寒い日にみんなで。

小さいときから高校生位までほぼ欠かさず私は手伝ってて、
冷たい水で「お菜洗い」をした気がする。
お菜は毎年つけ具合や仕上がりが気温や塩梅で
入れる塩で違ってくるんです。

洗い立てのお菜を漬ける瞬間と、
数日後、おばあちゃんが「水が上がったよ」という声は今でも思い出します。
今年のできはどうかなと、お菜を食べるのがとっても楽しみで。

お菜はね、気温が温かくなると酸っぱくなってくるんです。
でも、酸っぱくなっても決して捨てないの。
今度はそれを、しょうゆ、砂糖、みりんで甘く煮付けて更に食べる。

私はその甘辛いのも好きだった。
もうすぐ温かい日が来るよっていう一つの合図だったな」

井川「なんかこれこそが、おやつって言う気がするね。
そもそも厳しい肉体労働で疲れたから体に、
糖分を補給したり、飢えをしのぐためにおやつってあったんだよね。
だからその土地、その土地であるものを食べる。

あるものというのは余ったものだよね。

つまり採れすぎるもの。
いや採れ過ぎるっていうんじゃないな。

季節に一度、旬にしか採れないんだから、
来年まで持たせて食べきりましょうっていうね。
上手に保存して、それを食事やおやつに生かすというね。

ついこの前まで、食べ物というのは生きるためのもので、
どれを食べようかと選べるようなものではなかったんだから。

おやつといっても、ほんとうにいろいろで。
そういういろんな境遇の人たちがどういう縁か今ここに集まってお店をやってる。
袖ふれあうのも他生のの縁と言うからなにかあるんでしょう。

マメヒコやクルミドコーヒーが
誰かの何十年後の記憶に残るおやつを作れたらいいな、
そんな店でありたいなということで、お開きにしましょう。

ご静聴ありがとうございました」

2009年8月 7日

シリーズ 『おやつが好き』5

井川「昨日に続いてパティシィエだった彼女の話しを伺いたいと思います」

Embarassed「私が2歳からお世話になってた保育園ていうのが、
ちょっと変わってて。
園の毎日のおやつが、
煮干し1本と煎りハト豆ひとつかみ。
これが、めーちゃくちゃ美味しかったんです」

「煎りハト豆って何?鳩に豆鉄砲食らわすとはいうけど」

Embarassed「大粒の青大豆のことなんです。
毎日豆屋さんで煎ってもらった豆を配ってくれてたそうで。
大人になって、あちこちスーパーで探しても、
同じ味の煎豆には出会えませんでした。
それくらい美味しかった。

このとびきり美味しいお豆を、
なんとかお母さんにも食べさせたいと
こっそり半分食べずに持ち帰ったこともありました。
今マメヒコで働いていて、なんか豆に縁があるなあたしって」

井川「マメヒコで働くことは、君の場合、
保育園時代にすべて決まっていたような気さえするね。

今度からその保育園の卒園生を優先して採用するから
保育園の名前を教えてください。

おやつというのは、やはりお母さんとの思い出と直結してるね。
ほかにおやつのエピソードある?」

Tongue out「はい。
わたしは田舎で育ったので、
普段はいとこと一緒に
ひまわりの種をとって炒って食べたり、
飼っていたにわとりの卵で玉子焼きを作ったり、
ざくろや木の実を取って食べていました。
 
休みの日などに作ってくれたパンケーキとか、
サイダーとバニラアイスで作るクリームソーダは
ちょっと特別な気がして大好きでした。
 
どんなものを食べたか、という記憶よりも
一緒にお手伝いをしながら作った事を思い出します」

Kiss「すごく自分がおやつ大好きで、「おやつにしよっか」という言葉だで
寝てても飛び起きるくらい。

私が小学生上がる前は結構、 母は手作りおやつを作ってくれていました。
ドーナツ、パウンドケーキ、マドレーヌ、牛乳寒天、ババロアなど。

ただ、小学生になってしばらくたつと
母のピアノ教室が忙しくなり、打って変わって、
おやつくらい自分でなんとかしなさい、という方針に変わって野放しでした。

といっても小学生が喜ぶようなお菓子類はうちにはなく、
父が好きなおせんべいがあるくらい。

ピアノの教室の部屋の隣の居間で
ご飯まだかなーと静かにおせんべいをほおばっているのがおやつの思い出かな」


井川「おやつっていうのは、味というよりシチュエーションに
大きく左右されるね。

やがて食べるのが好きというひとと、
作りたいというひとに分かれていくのも面白い。

でも誰しもお菓子を一度は作りたいって思うよね。
ただ、最初の1回がうまくいったかいかないか。
それでその先が変わってくる。

作って喜んでもらえたら、また作りたくなる。
作るからうまくなる。
そしてもっともっと喜んでほしいと上達する。

そのうちにこれを職業にしようと。

そうしていまここに君たちはいるわけだけど。
最後になるけど、じっと黙っているあなたはどうかしら」

Frown「べつに、とくにありません」

井川「なにかおやつについて思い出ない?」

Frown私の家は幼い頃からおやつは買ったものばかりだったし、
せいぜい作ってくれたといっても簡単な蒸しパンで。
とくにおやつの記憶はありません」

井川「そんなことないと思うよ。思い出してみて」

Frown「みんなみたいにそんなお母さんがケーキを作ってくれたとかないもの。
家は手作りのお菓子などなくて、
料理も簡易的なものが当たり前で。
もの心ついた頃は自分の家のご飯があまり好きじゃなかった」

2009年8月 6日

シリーズ 『おやつが好き』4

Kiss「おやつの記憶を探ってるんですが、なかなかでてこないんです。
うちがお菓子や甘いものをあまり置かない家だったのと、
あまり甘いものが好きじゃない子どもだったせいかもしれません」

井川「なるほど、でも?」

Kiss「おやつって聞いて、一番先に浮かんだのは、
近所の友達のいえに遊びにいったときに、友達のお母さんが出してくれた
「ジャムサンド」かな。
食パンにジャムとバターを塗って、
食パンをもう一枚重ね、半分に切って、
友達と私に半分づつ。

パンはトーストせず生。
バターかマーガリンか定かでないのですが、たっぷり塗ってあって、
溶けてジャムと混じった部分がおいしかった。

よそのうちで食べるからか、
よそのお母さんがつくってくれることが新鮮だっのか、
友達との遊びの途中で食べるのが楽しかったのか、

なんだかとてもおいしくかんじました。
ただのジャムサンドが不思議と記憶に残っています」

井川「そうね。なにも自分のお母さんの手作りじゃなくたって、
おやつというのはあるわけでね。
どこかそういうシチュエーションの記憶というのがあるね。
そういうのある人は?」

Wink「あたしもおやつのエピソード、全然思い当たらなかったのですが。
そういうシチュエーションていうと、
今ふと、おやつって感じのものではないんですが。

幼い頃よく祖母の家に行っていて、行くとおやつをどっさり
食べきれないほど出してくれるのですが、
そのなかに、祖母特製、すりおろしリンゴジュースていうのがあって。
それがお気に入りでした。

ただリンゴをすってガーゼにいれて、手でぎゅーっと絞っただけのもので。
けれど祖母の家はけっこう汚かったのでガーゼもかなり黄ばんでいて、
今思えばよく食中毒にならなかったなって。
そういうシンプルで、でも祖母の愛情たっぷりの手作りジュースが
美味しかったことを。

今でもふと思い出します」

井川「みんな無い無いといいながら、それなりにあるよね。
そのりんごジュース飲んでみたいもの。
真っ黒くなったすりおろしりんごっていうのは、ボクも小さいころ
風邪ひいたら母親が作ってくれた。
大人になってから一度も思い出したこと無かったけど、
今聞いたら、そのにおいとかどす黒い汁の色とか、
わーっとまざまざとよみがえった。
そのときの蛍光灯の明かりとか、団地のふすまの穴とか、
若かった母親の顔とか。
プラスチックの摩り下ろし器なんかもね。

いったいどこにこういう記憶って残ってるんだろうね。
マメヒコに来る前はパティシィエだったあなたは?」

Embarassed「母の初パウンドケーキが
やはり私の一番大きなおやつ体験であり、
未来の私をパティシエに向かわせた、
小さなおやつでした」

井川「どんなおやつなの。すばらしいケーキ?」

Embarassedあたしのうちは母も働いてたんですね。
だから私はいつも母を見送り、母を待ってる。
保育園でね。

本当に手のかからない。
泣かないいい子でした。今でもよくそう言われます。
だってね。
そうすることが、忙しい母をせめて悲しませないことだって、
子供ながらにわかってたから」

井川「うん」

Embarassed「でも、口に出しては言わなかったけど、ずっと憧れてたものがあったんです。
それは」

井川「それは?」

Embarassed「サザエさんち」

「サザエさん・・・?」

Embarassed「いつも家でお母さん達が待っていて、皆でわいわいおやつを食べる。
そんなことうちはなかったから」

「さみしいね」

Embarassed「でも。でもね。
ある日、それは土曜の午後で、
保育園の帰りのお迎えの中に背広姿の父がいたの。
こんな早い時間にお迎えがきただけでもうれしいのに、それも父がいるなんて。
明るいうちに父と一緒に帰れるだけでうれしくて、うれしくて。

それで家について、扉を開けたら。
おかえりー。チーン。

映画やドラマのように、本当に扉を開けたらチーンてオーブンが鳴ったんです。

井川「オーブン・・・」

Embarassed「台所に走っていくと、
私の為に母がほんとに初めて、初めてパウンドケーキを、
たったいま、ほんとにたった今、チーンて、
私の目の前で焼き上げてくれて。

正直、そのパウンドケーキが、
美味しかったのか、
どうやって食べたのか、
今はもう全く覚えてないんだけど、
でも。

あの時の台所中に広がった甘い甘いバターの香り。
母と父の笑う顔。
オーブンから出てきたパウンドケーキ。
嬉しくて泣きそうになって、
嬉しいのに泣いたら困らせちゃうからダメダメって、ぐっと涙こらえて。
無理して笑って。

って、すいません思い出したら泣けてきちゃった」

井川「すいません。・・・ボクもCry

Embarassedすいません。ごめんなさい。

あの風景は私にとっての大切な思い出で、
おやつってこんなに人を幸わせにできるって。
それは今でも信じてることです」

井川「幼かった君は保育園生活がいつも寂しくて、
そんなある日、思いもかけずお父さんが迎えに来て、
思いもかけず台所にお母さんまでいて、
思いもかけず
ケーキが焼けていて、
思いもかけず泣けてきちゃって、
とっさに泣くまいとして。

そのことをきっと親は何とも思ってないんだろうけど。
幼い君はしっかり覚えていて、
それでパティシィエになろうとして」

Embarassed「親はパティシィエとか、こういう仕事に就くことを、さんざん反対しましたよ」

井川「人生とはそういう皮肉があるよね。
それでも親の反対を押し切ったというのも、
また親にとっては皮肉かもしれないね。
でも、いくら親が言おうとも、自分は自分の人生の主人公だから。
親は先に逝っちゃうからね」

2009年8月 5日

シリーズ 『おやつが好き』3

井川「クルミドとマメヒコのスタッフにおやつについて今日も聞いていきますよ。
母の愛情がおやつには込められているという話しでした。ではあなた」

Smile「わたしが子供のころは、
スナック菓子や駄菓子は遠足のときやお正月に。
普段は母の手作りおやつでした。

・マクドナルドのアップルパイを真似たもの
・大学イモ
・アイスクリーム
・おまんじゅう
・ドーナツ
・白玉あんみつ
・旬の果物

おまんじゅうは、近所に「よもぎ」をとりにいき、
親子でつくるのが楽しくて好きでした。

我が家は私と弟の二人兄弟で。
とくに私は女の子ということで「味の違いがわかる子になるように」と。

たとえばケーキなら、

お母さんの手作り、
不二家、
コージコーナー、
高めの素敵なケーキ屋さん、
といろんな種類を食べさせてくれました。

それは食事や飲みものもそうで、ダシは

カツオぶし、
昆布、
干しシイタケからそれぞれとったものを。

ご飯はお米屋さんで精米したものを。

コーヒー、紅茶、お茶も豆や茶葉からの香りの良いものを。

インスタントを食べるときもありますが、
インスタントとの違いをわかるようにしてくれました。

本物をわかっていて、インスタントも使う。

おやつも、手作りのものとスナック菓子と駄菓子を
シチュエーションに合わせて食べわけていたのは母のせいです。

余談ですけど、友達の中でも使いわけがあって(笑)。

あゆみちゃんの家に遊びに行くと明治製菓のお菓子、
お父さんが明治製菓の社員だったんです、
ミカちゃんの家は高校生のお兄ちゃんがいるからスナック菓子がメイン、
私の家は手作りおやつ。

おうちによって、おやつもさまざまで楽しかったのを覚えています。

あと、父と休日にカフェでケーキと紅茶を食べながら話をするのが好きでした。
クルミドコーヒーに父と娘で来るお客様を見ると、そのときのことを思い出します」

井川Cry「えぇ話しやないの。
それぞれの味の違いが分かるようにと、食べ比べさせる。
自分が色んなもの食べたかったというのもあるかもしれませんけど。
でも、すばらしいお母さんですね。
こういうお母さんに育てられたっていうのはね。
一本筋が通ってる。ほかにそういうのあるひと?あなたはどう?」

Laughing「あんまり思いつかなかいんですけど。

うちのおやつとして、
手作りで記憶に残ってるのは
夏にたまーに作ってくれたみかんゼリーで、
缶詰みかんを寒天でかためたもの。
タッパーにどーんと作り、
ダイナミックに食べた記憶があります。

それより、おやつというわけではないんですけど・・・」

井川「いいよ。おやつの話しじゃなくても

Laughing「年に何度かね。
ヨモギ汁。
公園でつんだヨモギをすり鉢ですって絞った汁を
飲まされました」

LaughingCoolTongue outSurprised「えーっ」

Laughing「フフフ。それがすごく苦くて大嫌いだったんですけど、
それを飲むと母が、『飴玉』をくれて。

なんてことない、普通の飴玉なんだけど
その時になめる飴玉がものすごく美味しかったのを憶えています。

ヨモギ汁は、今でも弟ともよく話す思い出ばなしです」

Cry「あんたも、えぇ話し持ってるやないの。
なぜ唐突に公園にヨモギ汁を飲ませたのか、ぜんぜん分からないですけど。
でもたしかに親ってそういうとこあるよね。
体にいいと思って、いいから飲めってね。

でもそういう強引さは、それなりに子どもの楽しい思い出として残る。
子ども本意じゃなくていんだよね親は。

ヨモギ汁が苦いから、そのあとの飴玉が甘くておいしかった。

確かにそれに勝るおやつはないような気さえするな。
ほかには?はい。あなたは?」

2009年8月 3日

シリーズ 『おやつが好き』2

井川「昨日に引き続き、クルミドとマメヒコのスタッフに、
おやつのはなしを聞いています。それでは、はいそこのあなた」

Cool「母は普段は道端のよもぎを摘んでお団子をつくってくれたり、
甘辛いおしょうゆ味のすいとん団子、今思うとみたらし団子ですけど、
和菓子をよく作ってくれていました。
できたての温かいものをいただくのはそれはそれで嬉しかった。
けどケーキとなると別格で」

井川「うん」

Cool「お誕生日にいつもバースデーケーキを焼いてくれたの。
ケーキっていうのは特別な感じがして、
オーブンを何度ものぞいてわくわくしてました。

おいしそうなスポンジケーキが焼けて、
生クリームをぬって
イチゴを飾って。

お誕生会に集まってくれたお友達にふるまってくれるんです。
ロウソクをのぞいて母がみんなにケーキをカットしてくれる。

すると母が「あれ?」というんですね。

「とりあえず食べてみて」と。
きれいに切られたケーキが配られて、食べるんだけど、
フォークを刺すとなんだかおかしい。
スポンジの下がとっても固いの」

井川「ははは」

Cool「とっても食べられたもんじゃない。
下の固いところだけがみんなのお皿にしっかり残されてて、
もうはずかしいったらなかった。
母に言わせれば、オーブンの調子がたまたま悪いんだそうだけど、
結局、ただの一度も、
下までふわふわのスポンジケーキに出会えたことはありませんでした。
大きくなったら、ふわふわのスポンジケーキが焼けるようになりたいと
幼心に決心しました」

井川「子どもっていうのはスポンジケーキが好きだからね。
お母さんもスポンジに挑戦して喜ばせてあげたいんだけど、
スポンジの決めを細かくする泡立てやら、火加減が意外と難しい。
マメヒコでもショートケーキやロールケーキをやるとき、
どうしても作り手によってこのスポンジのできが変わってきちゃうから、
スタッフ力が低いときはスポンジをメニューから外しちゃうんだよね。
これは毎日やっててもなかなかうまくならない。

そういう意味ではバターケーキの方がおやつとしては失敗が少ないよね。
ほかにお母さんのおやつが思い出に残っている人は?」

Undecided「はい。
母親は、料理やお菓子を作るのが不器用だったみたいで、
結婚してから料理教室に通い、
お菓子や家庭料理の作り方を覚えたとよく言っていました。

小さい頃から本棚にきれいに並んだNHKの家庭料理のテキストや
料理の写真を良くめくっていました。

子どもを喜ばせたい。きっかけはすべて親心だったんですね。

特別手の込んだことをするということはなくて、
ホットケーキミックスを使ったホットケーキとか、
ドーナツミックスで簡単にできる揚げドーナツとか...。

子どもだったわたしは、混ぜたり、型を抜いたり、
焼けたケーキの表面をこっそり触ってみたり、
鼻を近つけてかいでみたり、
早く食べたーいと走り回ってみたり。

そんな記憶の中でいちばん思い出深いのは、
やっぱり焼きっぱなしのスポンジケーキ。
誕生日やクリスマスのような特別な日ではなくても、
しょっちゅう焼いてくれました。

いつも突然作り出して、台所のほうからカシャカシャカシャカシャ。

そのテンポの良い音が聞こえてきたら、あっ!お母さんケーキ作り始めた!

と遊びもほったらかし、すぐに台所のほうへ駈けていきました。

ハンドミキサーなどの電化製品は家庭になくて、
泡立て器でまずは卵とお砂糖を泡たててましたね。

卵、砂糖、粉、バターだけでできる焼きっぱなしのケーキは、
子供ながらにすごく興味がありました。

「最初の泡立てがとっても大事よ」、
「粉は混ぜすぎちゃだめなの」とよく言っていました。

型に紙を敷いたりするのは私の役目で、
生地を型に入れる時は、わたしだとこぼしちゃうからお母さんしかできない
と思っていて。

焼いている間はオーブンのガラス窓に張り付き、
ふくれ上がってくるケーキ飽きもせずにずっと眺めていました。

「オーブン熱いから触っちゃだめよ!」ともよく言われました。
ボールに残った生地をこっそり舐めるのも楽しみの一つでした。

焼きの途中にオーブンの扉を開けてケーキがしぼんでしまうことも。

焼けたらすぐに型から出さないとしぼんでしまうことも、
思い出してみれば、4、5歳の時に教わりました。

焼き上がったドーム型をしたスポンジケーキの、
焼きたてのにおいと、つるっとしたした焦げ茶の表面に触れたくて、
いつもケーキの近くから離れませんでした。

母親の作る焼きっぱなしのスポンジケーキは必ずといっていいほど
熱いうちにみんなでフーフーしながら食べました。

デコレーションなんて手の込んだことはしませんし、
包丁でさくっと切ってリプトンの紅茶とともに食べました。

ふわふわで熱いから卵の香りがして、
あっという間に食べてしまう焼きっぱなしのスポンジケーキ。
「また作ってね。今度は最初の卵割るとこからやらせてね!」
そう言っても決まって、次もテンポの良い泡立ての音がして、
慌てて台所に駈けていく小さい頃の私でした」

井川「ふーん。実に細かく覚えてるね。
焼けたらすぐに型から出さないとしぼんでしまうと4、5歳の時に教わった
っていうのはすごい。
親の影響というか教育のたまものですね。
三つ子の魂百までという感じがする。
女親というのはやはり娘に、なにかを残したいと思うものなんでしょうか。
お母さんから何かを教わったよ、というのあるひと?」

2009年8月 2日

シリーズ 『おやつが好き』1

井川「えーマメヒコの井川です。今日はクルミドコーヒーのスタッフと
マメヒコのスタッフに集まってもらって、
子どものころのおやつについて聞いてみたいと思います。

というのも。
いまここでこうして働いてる皆さんは、やはり少なからず、
小さいころに食べたおやつがあったから、今ここにいるということありませんか?
あのおやつがあったから、いまわたしはここにいるんだと。

ボクには四歳になる娘がいるんだけど、
娘やその友人、小さな女の子達がほんとうにおいしそうに、
楽しそうにおやつを食べてる。
その光景はまさにほほえましくて、それを見ると、
もしかしたら、この女の子達が大きくなって、うちで働いてるのかもしれない。
大人になって斜に構えちゃってるけど。そう思うことがあるんだよね。

おやつの記憶って言うのが強く残っていれば残っているほど、
この仕事を選んだ理由って言うのがはっきりすると思うんですね。
とくにマメヒコもクルミも全品スタッフが手作りしてるわけで、
そういう店をあえて選んでるわけだから。

そういう話を聞きたいと思います。それでは一番前のあなたから」

Smile「わたしの子供のおやつですか・・・。

えっと。祖父が趣味で畑をやってたので、
すいかやいちご、みかんなどその季節の果物をたくさん食べてました!」

井川「すごい。東京ではありえないね」

Smile「今考えると恵まれた環境ですね♪

スナック菓子とかはあまり食べさせてもらえなかったかな。

んー、そのかわり母がケーキをよく作ってくれましたね。
記憶にあって大好きだったのは。

ベイクドレアチーズケーキ。
アップルパイ。
それと、プルーンとくるみのケーキ!!!

くるみが大好きでこの店を選んだのはそのケーキの影響です」

井川「なるほど。子どものころに食べたおやつがいまにつながってるわけね。
ほかに?」

Laughing「私のお母さんは、よくバナナケーキとカスタードプリンを作ってくれました。
バナナケーキもカスタードプリンもかなり大きくて。
計りも使わず かなり大胆に作ってたな。

学校から帰って。
家の玄関を開けてケーキの匂いがした途端、台所に直行して、
クンクン匂いをかいで、
早く食べたい気持ちを高ぶらせながら、今日はラッキーデーだ!と嬉しくなってました。

わたしにとってバナナケーキとカスタードプリンは
お母さんの優しさを感じるもの、
幸せなもの、
スペシャルなごほうび
っていう感じです」

井川「ふーん。プリンっていうのは、卵だけあればいいから簡単だしね。
プリンがあたしにとっておやつだっていうひと?」

Embarassed「はい。わたしにとってもおやつといえば、母親の手作りプリンかな。
しかも出来立ての、あったかいところをぱくり!
というのが好きでした。

いつもは冷たいプリンがあったかいという衝撃と、
母の手作りということでテンションが上がって、
かなりの量を作ってもあっという間に食べちゃいました。フフフ。

なんでもないおやつが、手作りの魔法にかかって、
おいしくなるということ。

そのことをこのときに知ったと思う」

井川「なんでもないおやつが、手作りの魔法にかかっておいしくなる。
カフェをやってると、この手作りの魔法というのがどこかなくなってしまうよね。
おいしいとか。おいしくないとか。
そういうことじゃなくて、
誰のために作るのか。誰が作っているものなのか。
母親の手作りのおやつというのは、そういうことがはっきりしてるから、
今でもぐさっと心に残ってる。母親とおやつについて他にあるひと?
はい、きみ」