ほんとは、昨年末に銀座で上演した『ぽうく』という風刺劇の再演を、今年の初夏と年末にやろうと考えていたんです。けれど出演者がどうにも揃わなくて、やむなく中止にしようかなと思っていたんですね。そしたら若い人たちだけで、演劇をやってみたいと相談されて、じゃあ脚本は書くから、あとは自分たちでやってみたらと。それで『ベアトリネエチャン』を企画制作することになったんです。

タイトルの『ベアトリネエチャン』というのは、歌のタイトルなんです。オペラ『ボッカチオ』に出てくるアリアを、メロディーはそのままにして、喜劇役者エノケンがふざけた歌にして大ヒットしたんですね。大正時代のはなしです。大正時代にオペラと軽演劇を混ぜた浅草オペラというのがあって、それについて調べたことがありました。大正時代というと、今からちょうど100年前ですけど、これはたくさんのヒトが指摘していますが、どこか現代に通ずる雰囲気があるんですね。日本に西洋が入ってきて、新しい家族のあり方とか個人の自由とか。従来の日本の価値観が大きく揺さぶられた時代。それに翻弄されてる若者のはなしにしたいと思いました。価値観の揺らぎは、まさに今あちこちですごいですよね。

おそらく、いい作品に仕上がると思いますから、ぜひ、多くの皆様に若者応援の意味合いも込めて、銀座まで足を運んでいただけたらと思います。

MAMEHICO代表　井川啓央